こんなEU、あんなEU~日常に見るヨーロッパ | Life in the EU

武器よさらば Weaponless Expansion

Posted on: 2010/05/13

大前研一氏の書いた『衝撃!EUパワー』(朝日新聞社)という本を読んだ。EUの専門家からすると、大胆すぎる提言もあり眉を顰める人もいるかもしれないが、触発的な指摘に溢れ、EUの全体像を捉えるには最適な書ではないかと僕には思われた。


大前氏は、何よりもEUが武力を行使せずに版図を拡大した点を評価している。ピョートル大帝やアレキサンダー大王は武力で領土を拡大したが、EUは国家間の契約と共通の理念の下で、周辺の国々を融合し、拡張を図ってきた。こうした超国家が誕生したことの効果として、これまで根強かった「国民国家」という概念を希薄化してしまったことを大前氏は挙げる。そしてそれが民族紛争の意味を失わせてしまったというのだ。

例えばアイルランドの武装組織IRA(アイルランド共和軍)の失速は、EUの誕生によってIRAの母体であるアイルランドの人々の気持ちが独立運動から離れていったことによる。「ここはイギリスだ」と言われると、「何言ってんだ。こっちはアイルランド人だ」となる。しかし、「ここはEUだろ」と言われると、「まあ、確かにそうだ」となってくる。アイルランドもEUの一員。イギリスもEUの一員。独立しようがしまいが、どっちにしてもEUなのにといった具合に当事者のパースペクティブが一段高いレベルになると、内戦なんてナンセンスだということになる。それと同じような意識変革が他の国々にも波及し、ヨーロッパでは民族紛争が減少傾向にあると大前氏は分析する。

大前氏の発想が凄いのはその先だ。このEUのコンセプトがアラブ世界でも適用できると考える。AU=アラブ・ユニオンを作って、パレスチナやイスラエルを国家として認める。そしてAUのメンバーに加盟させて、ボーダレスな連邦の一員として共存させることができれば、争う理由がなくなるじゃないかというのだ。

大前氏は、EUのリスクファクターなどを鋭く分析しつつも、EUを人類初の試みとして高く評価し、今後の在り方に大いに期待している。21世紀はアメリカと中国のG2の世紀になると予言する論調が多い中、この著作は斬新な視座を与えてくれるだろう。(ロニ蔵)

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=10925

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