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スペイン映画の巨匠ビクトル・エリセ Víctor Erice, Maestro of the Spanish Cinema

Posted on: 2010/06/30

2010FIFAワールドカップの開催に合わせて、英国エンパイア誌が「史上最高のワールドシネマ100本(100 Best Films of World Cinema)」を発表した。第一位は黒澤明監督の「七人の侍」。そのほか、日本映画では「千と千尋の神隠し」、「東京物語」、「ゴジラ」、「となりのトトロ」、「AKIRA」など12本が選出されていたが、その中にスペインが誇る巨匠ビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」が選ばれていて懐かしく思った。

 なぜ、懐かしいのかと言えば、ビクトル・エリセは寡作な作家として知られ、今まで3本の長編映画しか撮影していないからだ。最後の長編は1992年に制作した「マルメルの陽光」。その後、「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」というオムニバス映画の中で、短編を制作しているが、それも2002年のこと。およそ10年に1本しか撮っていないのだ。

 私が最初に観たのは、「エル・スール」という1982年に制作された作品。当時、渋谷でスペイン映画祭が開催され、その中の1本として上映されていた(当時は「エル・スール〜南へ」という邦題がつけられていた)。

 映画はエスレリャというひとりの少女の成長を綴っていくが、彼女の内面の変化があぶり出すのが父親・アグスティンの深い孤独だ。アグスティンはスペイン内戦の傷跡をまだ抱え込んでおり、あこがれの地・南への想いを断ち切れないでいた。映画は寡黙に、そして美しく、父と娘の日々を映し出していく。

 映画の冒頭、ひとつの部屋が朝日で明るくなり、エストレリャが父親の死を予感するシーンのなんと美しいこと。映画のすべてのシーンが、まるで絵画のような奥深い美で構成されている。日常の中の細部にこそ「物語」は存在する、そのことを思い知らされた映画だった。大学時代の恩師が「だからこそ、制作するのに10年という歳月が必要だったんでしょうね」と語っていたのを思い出す。

 北野武監督の作品が話題となった今年のカンヌ映画祭で、ビクトル・エリセははじめて審査員をつとめ、インタビューの中で、現在制作中の作品について次のように答えている。

「1年前から小作品を絵を描くように撮っています。これがとても楽しいんです。『Mémoire et Rêve』と名づけたドキュメンタリーシリーズです。3章撮りましたが、10章撮れたら上映したいですね。世界中を旅しながら撮っている作品なんです。このカンヌでも何か撮るつもりです」

 彼の新作に出会えるのはいつになるのだろうか。

100 Best Films of World Cinemaの公式サイト
http://www.empireonline.com/features/100-greatest-world-cinema-films/default.asp?film=1

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