こんなEU、あんなEU~日常に見るヨーロッパ | Life in the EU

詩人が撮った映像 A Poet’s Films

Posted on: 2010/07/08

ジョナス・メカスの『リトアニアへの旅の追憶』を観た。アメリカに亡命していたメカスが、27年ぶりに故郷リトアニアを訪れて撮影された1972年の作品だ。見逃していたこの映画が「EU FILM DAYS 2010」で上映されると聞いて、東京国立近代美術館フィルムセンターに足を運んだ。


映画はメカスが亡命先に選んだニューヨークの1950年代の風景から始まるのだが、リトアニアの映像が映し出された瞬間、とてもなつかしいデジャ・ビューに襲われた。ザラザラしていて、それでいてぬくもりを感じさせるノスタルジックな、まるで夢の中のワンシーンのような映像。おっとりとして、どこまでも無垢で、まるで19世紀の人々のようにゆったりとした時間の流れの中に生きている故郷の人々。突然歌い出したり、踊り出したりするのだが、それが実に自然で、なぜか「大地」というしばらく忘れていた言葉を思い出してしまった。みな幸福そうだ。でも、それは清涼飲料水のTVコマーシャルのような多幸性の笑いではない。素朴で、心の底からあふれ出てくる笑いなのだ。

ああ、こんな国に行ってみたい!

リトアニアの農民たちに宛てた手紙をまとめた『どこにもないところからの手紙』(書肆山田)の中で、メカスはこんな風に書いている。

誰もが皆、先に進みたがる。しかし、今は、後戻りするほうが、ずっと賢いと私は思う。私たちが失ったものを見、そして探し出すこと。〈前進〉という大義名分のもとで私たちは何を失ったか。多くのものを失っただけではない。私たちはすべてを失っているのかもしれない。空気、水、大地、河、小川、森、草花、歌、無垢、聖なるすべてのものへの信仰。
(村田郁夫訳)

『リトアニアへの旅の追憶』の中には、私たちが失いつつあるもののすべてが失われずに生き続けていると言ったら、言い過ぎだろうか?(ロニ蔵)

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