こんなEU、あんなEU~日常に見るヨーロッパ | Life in the EU

Archive for October 2010

群馬県高崎市で、姉妹都市であるチェコ共和国プルゼニ市との提携20周年を記念した「チェコファア」が9月1日から11月7日まで開催されている。両市の交流は、プルゼニ市に拠点を置くピルスナー・ウルケル・ビール社と、高崎市に工場を構えていたキリンビールが技術相互協力協定を結んだことをきっかけに始まった。高崎市が市制90周年を迎えた1990年に、日本とチェコでは初めてとなる姉妹都市提携が調印された。

今回のチェコフェアは、高崎市の市制施行110周年も重なったためにかなり大規模な記念イベントとなった。中でも目玉となったのが、人形劇大国チェコが誇るプロの人形劇集団の公演が市内で8回も行われたことだ。

チェコの人形劇は伝統があり、質も高い。チェコがハプスブルグ帝国の一部だった時代、住民たちはドイツ語を話すことを強要されていたが、子ども向けの人形劇だけはチェコ語の上演が許されていた。社会主義圧政下の時代も、人形劇によってニュースが伝えられたリ、社会風刺が行われていたというから、ドラマを超えたメディアの役割をも果たしていたのだろう。

高崎にやってきたのは、プルゼニ市で活動する「デバドロアルファ」。チェコでもトップクラスの人形劇団で、マリオネット(糸操り人形)87体とともに来日した。そのユーモラスな仕草に笑いが起こったり、まるで役者のように滑らかに動くマリオネットたちの姿にうっとりしたりで、人形劇の世界に魅了された人も多かったのではないだろうか?

その他にもチェコ生まれの芸術家アルフォンス・ミュシャ展やチェコの若手演奏家コンサートなど極めて芸術性の高い催しが行われた。参加型イベントとしては、チェコ料理教室やチェコ民族舞踏教室、チェコ伝統工芸教室などが開催された。このチェコフェアに先立つ8月25日から9月13日にかけて、プルゼニ市で「日本文化の日」が開催され、高崎市から書道、茶道、生け花、盆栽の第一人者が現地を訪れ、体験講座が開催された。

ビールがとりもつ高崎市とプルゼニ市の交流が、これからも末長く続くことを期待したい。                                  (ロニ蔵)

キャパの名を知っている人は多いと思う。20世紀、5つの戦争を取材したハンガリー出身の報道写真家で、彼にちなんで報道写真を対象としたロバート・キャパ賞もある。私は最近、たまたま伝記を読んだ。「キャパ その戦い」(文春文庫/リチャード・ウィーラン著/沢木耕太郎訳)。戦線を駆け巡った時期のキャパの評伝だ。

たまたま、というのは、月刊誌「文芸春秋」10月号をめくっていたときに、「キャパの世界、世界のキャパ」というコーナーに2枚のポートレイトがあったからだ。沢木氏が十数年前のことを回想している内容になっている。

戦時中にあれほど人間味あふれる表情をとらえた写真から、私たちは逆境に耐えるアートの力を感じると思う。また、そのような表情を写した写真家はどのような人物だったのだろう。彼の写真同じく、彼のポートレイトで分かるように、撮られているものは映画の一場面のようだし、登場するのはどこかの俳優のようでもあった。その伝記の中には、世界中の人と友だちになり、ピカソやヘミングウェイらとの華やかな交友関係の中で、戦線に赴いたキャパのドラマチックな生き様を伺い知ることができるのだが、何よりも印象に残っている部分が2つある。一つは、スペイン(スペイン内戦下)と中国(日中戦争)で多くの人が戦火を逃れている光景を目の当りにする部分。そしてもう一つは、映画のシーンのようなことが実際に起きているのか、実際に起きている光景が映画のシーンになっているのか不思議な錯覚に陥っている部分だ。キャパは、その目で見た“幻想のような惨事”の現実をシャッターという世界に閉じこめて、現代の私たちに残しているのではないかと思う。(くるみ)

リトアニアからやってきたサキソフォン奏者、リューダス・モツクーナス(1976-)の演奏を聴いていると、ジャズについてのさまざまな想いが頭の中を駆け巡った。最近、おしゃれなレストランやバーに行くと、BGMにはたいていジャズがかかっている。また、高級車レクサスのサウンドシステムは、ジャズが最も聴きやすいように設計されていると聞いたことがある。

 そうしたジャズの大半は、‘奇跡的な美酒’と称される、1950年代後半から1960年代前半にかけて録音されたモダンジャズだ。なぜ、モダンジャズがそのように呼ばれているかというと、当時のミュージシャンたちの汗みどろの格闘の末に、本当に陶酔するように美しい音楽へと到達することが出来たからだ。それは天才的な音楽家たちの幾多の出会いを経て成し遂げられた、本当に奇跡的なアートフォームだった。ブルーノートレーベルの1500番台のアルバムを聴くと、そうしたことが実感できるはずだ。

 それがあまりにも美しいものだから、ジャズのもつ雑食性は切り捨てられ、それだけが再生産され、ジャズは僕たちのまわりに溢れる心地のよいアンビエント・ミュージックになった。しかし、それは別に否定すべきことでもない。誰だって、気持のいい音楽が好きだ。

 しかし、リューダスがサキソフォンと一体化して、今までに聴いたことのなかったような囁きや叫びや息づかいでこちらに語りかけてくると、「洗練は衰退の始まり」というのは実に的を射た言葉なんだなと思えてくる。ジャズという音楽の持つ既成概念の彼方に、新しい美学が誕生する瞬間に立ち会うことが出来た喜びに心底ゾクゾクした。

 デュオのパートナーである宝示戸亮二(ほうじと・りょうじ)(1959-)の存在も強烈だった。リリシズムと狂気を併せ持った、彼のピアノ(およびエトセトラ)演奏は極めてスリリングで、相互に触発し合いながらジャズの闘争領域を拡大していった。挑発するようなきわどい宝示戸の存在があってこそ、9月21日・新宿PIT INNでのインプロビゼーション(即興演奏)は、‘奇跡的なスピリッツ(蒸留酒)’となり得たのだ。仙人のような宝示戸のやんちゃぶりに応える腕白坊主は、リューダス以外にはなかなか見つからないかもしれない。(ロニ蔵)

 
リューダス・モツクーナス
http://www.myspace.com/liudasmockunas

宝示戸亮二
http://www5.famille.ne.jp/~kanji/index.html

リューダス・モツクーナス&宝示戸亮二のニューアルバム:vacation music
Disc Callithump(ディスク・キャロサンプ)
http://disc-callithump.galabox.net

“魔法の杖”という名のオープンサンド

毎年現れては消えていくフィンランド・カフェを知ったのは、2006年の赤坂アークヒルズに開店しているときだった。昨年2009年には渋谷の少し外れまで友人と足を運んだ。いつどこを訪れても、そこにはフィンランド独特の居心地のよさが演出されている。

これまで期間限定だったのが、通年営業のお店として代官山駅近くに7月にオープン。これまでどおり、飲食だけでなく、お店でフィンランドグッズも購入できる。

フィンランドベリーの冷たいフルーツスープ

シンプルながら温かみのあるイッタラの食器。白木を使ったテーブルと椅子。そして食事は、どれも日本でも口にしている素材なのに、組み合わせがとてもユニークで美味しい。例えば、オープンサンドのゆで卵の下には薄くスライスしたりんごが敷いてあったり、キノコソースのハンバーグはスパイスの利かせ方が新鮮だったり。

季節限定のメニューもあって、何度も訪れたくなる。今回はフィンランドの夏の風物詩だろう、ザリガニ料理。壁にはヘルシンキのビデオ映像が流れていて、まるで現地で窓から外を眺めているよう。(みかん、写真も)

フィンランド・カフェ
http://united-destinations.com/

フィンランド大使館からのお知らせ
http://www.finland.or.jp/public/default.aspx?contentid=198097&nodeid=41264&contentlan=23&culture=ja-JP

フィンランド風ハンバーグステーキ

今年第7回目となる「ラテンビート映画祭」が9月16日から東京で開催された。スペインをはじめとするラテン諸国から日本初公開の新作話題映画18本が上映されている。東京では1週間ほど、京都、横浜でもほぼ同時期に開催して、10月11日までの日程だ。カンヌ、ベルリン等の国際映画祭に出品された話題作のほか、世界の巨匠がラテン社会を舞台に撮った最新作のラインナップで、カルチャーを存分に感じることができる。

2011年公開予定で、オープニング上映作品となったのは、スペイン内戦下のマドリッドを舞台に喜劇役者と少年の交流を描く「Paper Birds」。スペイン映画界の巨匠カウロス・サウラ監督で史上最高のフラメンコ歌手、ダンサー、ギタリストが出演してフラメンコの情熱的でドラマチックな世界を描くダンス&ドキュメンターリー映画「フラメンコ×フラメンコ」。ミステリー映画「命の相続人」は、2005年アカデミー賞外国語映画賞受賞作品「海を飛ぶ夢」で知られるアレハンドロ・アメナバールと、スペインの人気俳優エドゥアルド・ノリエガがタッグを組んだ最新作だ。

「命の相続人」は、ノリエガ演じる医師・ディエゴが、ある事件から自分に不思議なパワーを備えていることに気がつく。それは、手をあてるだけで人々の傷を癒すことができる“ゴッドハンド”の能力なのだが、他人を救う代わりに、自分の家族の命を失っているということに気がつくのだ。ミステリーとはいえ、この映画からは、命のつながりや人との結びつきのようなメッセージを感じずにはいられなかった。(くるみ)

国立西洋美術館の主任研究員・大屋美那さんにお話をお伺いする機会があった。フランス近代美術を専門にしている大屋さんはこれまで「ロダンとカリエール展」「フランク・ブラングィン展」などの企画展を担当。「ロダンとカリエール展」は本国フランスでも評価され、国立西洋美術館の後、オルセー美術館を巡回した。日本の企画展としては希有なケースである。

 そんな大屋さんに「西洋美術の魅力とは?」と尋ねると、「一口で言うのは難しいですが」と前置きしながら、「あえて言うと多様な価値観です」と答えてくれた。

「フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、イタリア……それぞれの文化が多様性を持っており、それが美術作品の中に凝縮されています。一方、私たちは日本人ですから、西洋文化というのは異国のものですが、そうは言っても日本の多くの部分が欧米化されてきていますので、日本と欧米のミックスしたところが皆さんの中にもあると思うのです。美術作品を見ることで、そうした文化を感じ、刺激され、自ら歴史をひも解く、というのは素敵な体験です。美術作品を通じて、自分の中にある多様性を感じたり、自分にはない多様性に触れることができるのです」

 欧州に行くことが多い大屋さんだが、その度に美術が同時代の文化の影響を受けていることをひしひしと感じるという。「私たちの旅行は美術館と本屋さんが中心ですが、それでも欧州に行くと芸術は総合的なものだなと感じます。彫刻が建物の装飾になっている場合もありますし、画家や彫刻家が舞台美術を担当することもあり、美術が美術単独で成り立っているわけではなく、同時代の音楽や演劇や食文化などにとりまかれている。ヨーロッパの町へいくと、町ごとにそうしたことを感じますね」

 では欧州で好きな美術館は? 大屋さんは迷いながら、2つの美術館をあげてくれた。
「オルセー美術館は一度入ってしまうと迷宮入りみたいな感じで、出て来れなくなるぐらい大きくて、大切な場所ですが、同じパリには、作家の息吹が感じられる小さな美術館がいくつもあります。特にsが好きですね。モンパルナスでブールデルがアトリエとして使っていた場所をそのまま美術館にしているのです。現代的に改修されている部分もありますが、中心部分は当時の空気が残っていて、柱の傷もそのままです。
 あと、デンマークのルイジアナ美術館は海に面した庭園や建築が美しく、その中でジャコメッティなどの彫刻を時を忘れて楽しむことができます。私はこうした小さなこじんまりとした美術館が好きです。そういう小さな美術館でも存続することができる文化的環境をうらやましく思います」
 ヨーロッパに行かれた際にはぜひお訪ねください。

国立西洋美術館のHP
http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html

ラフォーレミュージアム原宿で開催されているカール・ハイド展を観てきた。

カール・ハイド(イギリス)は、世界のダンスミュージックを牽引するエレクロミュージック・ユニット「アンダーワールド」のボーカル/ギタリストだ。アンダーワールドは、彼とリック・スミス(Key)の二人による、ロンドン、いや世界のクラブシーンの最先端を走るカリスマ・バンド。映画『トレイン・スポッティング』にも彼らの曲(ボーン・スリッピー)が使われていたから、ご存じの方も多いと思う。

一時期アンダーワールドに嵌っていたことがある(特に深夜のドライブには必需品だった)ので、カール・ハイドが一体どんな絵を描くのかずっと気になっていた。というのも、カールとリックの二人は、音楽以外でも、アート集団tomatoのメンバーとしてファッション、アート、デザイン、映画など、表現の可能性を押し広げるさまざまな活動を行っているからだ(tomatoが手掛けたちょっとユニークな作品としては、テレビ朝日のロゴタイプなどというのもある)。あるミュージック・フェスティバルで、全長45メートル、高さ7メートルという巨大なウォールペインティングを一夜がかりで完成させて観客の度肝を抜いたということも聞いていた。そして原宿で、世界で初めてカールの個展が行われるというのだ。

今回の展覧会では、2メートル以上に及ぶ大作を含めた約90点のペインティング作品が展示されていた。僕は、「Elevated on Instruments of Altitude」(http://www.underworldlive.com/art/viewgallery.asp?DID=1335)という作品がいたく気に入ってしまった。英語に「spontaneous:自然に起きる、無意識の」という単語があるが、まさしくそんな感じなのだ。そして、しばらく眺めていると、「無為自然」という言葉が思い浮かんできた。無為自然とは、宇宙のあり方に従って、自然のままに生きていくこと。そんなに大げさに考えなくてもいいのだろうけれど、彼の絵を観ていると世界がどんどん広がっていくような気がする。アンダーワールドの音楽もそうなのだが、閉じていくというよりも、どこか解放的で、別の世界に連れて行ってくれるところがある。でも、それが一筋縄ではいかない解き放ち方だから、とても魅力的なのだけれど。

水墨画など日本の絵画から、横尾忠則、森山大道など、日本のアートをリスペクトするというカール。展覧会場には、彼のこんなメッセーが寄せられていた。
「ダンスが一枚の絵になり、絵がある言葉の連なりになり、言葉の連なりが一枚の写真になり、写真がダンスになる」
「踊っているあなたの頭の中では、いったい何が起こっているのか?」(展覧会のタイトル)

そこにはまさしく一枚の絵となったダンスが…。(ロニ蔵)

ラフォーレミュージアム原宿
http://www.lapnet.jp/event/event_r100825/


自由で活発な発言を歓迎します。

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