こんなEU、あんなEU~日常に見るヨーロッパ | Life in the EU

出てこい、現代のエラスムス! The EU’s Erasmus Program

Posted on: 2010/11/30

「ソクラテス計画(教育)」、「レオナルド・ダ・ヴィンチ計画(職業訓練)」、「ラファエロ計画(文化遺産保護)」など、欧州連合(EU)の実施するプログラムには、ヨーロッパを代表する知識人の名前が冠されている場合がある。「ソクラテス計画」の中にある「エラスムス計画」も、そんなプログラムの一つだ。

この計画は、EUのメンバー国の高等教育機関に学ぶ学生を他のメンバー国にある高等教育機関に派遣し単位取得を認める交換留学制度で、これまで20年以上にわたり学生や教員たちが交流する機会を与えてきた。さらに欧州以外の地域の学生にEUで学ぶ機会を提供する「エラスムス・ムンドゥス」計画もある。ムンドゥス(Mundus)は、世界とか宇宙とかいう意味だから、世界中を舞台に学生や教員の交流を図ろうというものだ。

こうした計画名の由来となったエラスムスとは、15世紀から16世紀に活躍したオランダの人文学者。欧州各地を歴訪して研究を続け、トマス・モアやヘンリー8世など当時の知識人たちとの交流を図り、幅広い知的ネットワークを築いたことで有名だ。このネーミングには、そんな現代のエスラムスを一人でも増やしたいという願いが込められているに違いない。

エラスムスは、神学関係の古典の校訂や注釈に情熱を傾け、ギリシア語の新訳聖書の校訂本を世界で初めて出版したことで知られる。執筆活動も精力的に行い、『格言集』や『痴愚神礼賛』など多数の名著を著した。特にトマス・モアの家で書かれた『痴愚神礼讃』はユニークな書で、賛否両論を巻き起こし、当時の言論界で大いに話題になったようだ。これは、人間を愚か者の集団として捉える「痴愚神」という女神が語り手で、当時の権威をこき下ろす辛辣な諷刺の書だ。現代なら間違いなくベストセラーになっただろうが、神学関係のお堅い学者がこのような書物を出版しようと思ったこと自体が画期的だ。

「どこをみても、キリスト教徒の日常生活は、馬鹿げたことで満たされております」と痴愚神は言う。「このようなことによってお金が儲かることをよく知っている聖職者たちは、彼らがそのような馬鹿げたことをするのを黙認するどころか、それを助長してさえいるのです」。当時、こうした痴愚の女神の言い分に拍手喝さいを送った人も多かったのではないだろうか?

エラスムスは晩年、マルチン・ルターと教会のあり方について論争をすることになるが、人文主義者の立場から世界平和への道を説くという姿勢は生涯変わらなかった。「エラスムス計画」によって、人類の痴愚さを排し、世界に豊かさをもたらす21世紀のエラスラムたちが数多く生まれることを期待したい。(ロニ蔵)

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