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税率0.005%でも4兆円の税収!?~革新的資金調達に関する国際会議が東京で開催 International Conference on Innovative Financing Held in Tokyo.

Posted on: 2011/01/05

2010年12月16日と17日の両日、東京で「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」(Leading Group on Innovative Financing for Development)の第8回総会が開催された。「革新的資金調達」とは、巨額の費用がかかる途上国の貧困や気候変動(地球温暖化)の対策において、ODAなどの既存の資金源では賄いきれない部分の資金を新しい手段で調達しようというものだ。リーディング・グループには世界の約60カ国が参加しており、2006年に第1回総会がパリで開催されて以来、革新的資金調達に関する議論が重ねられてきた。

革新的資金調達と言われると、何かいかめしく、縁遠い話のようにも聞こえるが、意外に身近な話題だ。フランスや韓国など約15カ国では、2006年以降、革新的資金調達メカニズムの1つである「国際連帯税(航空券税)」が導入されており、これらの国々を出発する国際線の飛行機を利用する人は、日本人を含めて誰もがこの税金を支払っている。フランスや韓国を旅行すると、フランスの場合はエコノミークラスで4ユーロ(約450円)、ビジネス/ファーストクラスで40ユーロ(約4,500円)、韓国の場合は1,000ウォン(約73円)を負担することになる(円換算は2010年12月現在)。また、日本の証券会社でも販売された「ワクチン債」も革新的資金調達メカニズムの1つだ(ちなみに、ワクチン債は英国が主導している)。この2つのメカニズムで得られた数百億円の資金は、途上国における3大感染症(HIV/AIDS、結核、マラリア)予防・治療のための医薬品や子どものワクチン接種の費用に使われている。

いま、革新的資金調達メカニズムの中で特に世界の注目を浴びているのは金融取引税だ。金融取引税のうち、通貨取引税は金融機関やヘッジファンドなどが外国為替市場で行う円やドル、ユーロなどの取引に課税するもので、市場での年間取引額が8京円(!)以上に及ぶことから、0.005%という低い税率でも税収は4兆円程度になると見込まれている。リーマンショック以後の金融・経済危機の中で、世界各国に不況と政府による巨額財政支出(それに伴うODAの減少)をもたらした金融機関やヘッジファンドにそのコストを負担させるべきだと、欧州を中心に導入の機運が盛り上がっている。サルコジ仏大統領やメルケル独首相も積極的な姿勢を示しており、仏独両国はG20首脳会議に議題として提起している。

こうした動きを受けて、EUも取り組みを始めている。2009年10月に、EU加盟各国の首脳らで構成される欧州理事会は、欧州委員会(EUの行政部門)に世界的レベルでの革新的資金調達についての検討を求めたほか、2010年3月には欧州議会が国際金融取引税の影響についての評価を欧州委員会に要請した。そして、欧州委員会はこれらの求めに応じて、2010年4月に作業文書を公表し、金融機関による負担やCO2排出への課金によって、資金調達と市場の効率性・安定性向上という2つのメリット(「二重の配当」)を得られるとした。同文書は、金融機関による負担やCO2排出への課金のような革新的資金調達手段の実施を成功させるためには、世界的レベルでの連携・協力(EU以外の世界の主要アクター[国家]の参加)が不可欠であることを強調している。しかしその一方で、EU単独での実施は効果が薄れるものの、EUがリーダーシップを示すことで、他のアクターも追随すると見込まれることから、検討しうるとも指摘している。

日本では、革新的資金調達メカニズムの第1段階ともいえる国際連帯税(航空券税)の導入の議論が行われている。12月16日に発表された「平成23年度税制改革大綱」では、同年度からの導入は見送りになったが、前原外務大臣は同じ日に開かれたリーディング・グループ総会において引き続き導入を目指すと発言した。

2011年は、これまで航空券税を主導し、金融取引税導入にも積極的なフランスがG8とG20の議長国を務めることになっており、既にサルコジ大統領は国際社会での革新的資金調達に関する議論を主導する決意を2010年9月の国連総会の場で示している。この問題を巡っては、今後も世界、欧州、そして日本で様々な動きが見られることになるだろう。(PAZ)

欧州委員会、主な革新的資金源に関する分析を公表(2010年4月、駐日欧州連合代表部/日本語)
http://www.deljpn.ec.europa.eu/modules/media/news/2010/100406b.html

「開発のための革新的資金調達に関するリーディンググループ」ウェブサイト(英語)
http://www.leadinggroup.org/rubrique20.html

開発のための革新的資金調達(日本外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/kklg/index.html

UNITAID(英語)=航空券税で得られた資金を管理・配分する機関
http://www.unitaid.eu/

予防接種のための国際金融ファシリティ(日本語資料あり)=ワクチン債で得られた資金を管理・配分する機関
http://www.iff-immunisation.org/

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