こんなEU、あんなEU~日常に見るヨーロッパ | Life in the EU

Archive for March 9th, 2011

ファティ・アキン監督の『ソウル・キッチン』を観た。監督が生まれ育ち、現在も暮らす、ドイツのハンブルグという街に対する愛に満ち溢れた映画だった。旅をしながらストーリーが展開していく「ロードムービー」も楽しいけれど、そこに暮らした者でなければ描くことができない「ホームタウンムービー」にも捨てがたい魅力がある。

ハンブルグというと国際金融の中心地で何か取っ付きづらいイメージがあったけれど、この映画を観た後では、そうした思い込みがまったく見当違いだったということが分かった。トルコ系移民であるアキン監督のまなざしによって捉えられたこの港町は、さまざまな民族が暮らし、彼らのエネルギーが渦巻く、ごった煮(ソウル・キッチン)状態のカオスそのものだ。映画の舞台となるのは、ギリシア系ドイツ人が経営する下町のレストラン「ソウル・キッチン」。アラブ系やトルコ系、ギリシア系やアフリカ系などバラエティに富んだ若者たちが夜な夜な集まってくる魂(ソウル)の救済所でもある。

ドイツの全人口約8300万人のうち700万人(9%)が外国人だ。これはアメリカ、ロシアに次いで世界で3番目に外国人の割合が多い国ということだ。なぜ外国人の割合が増えたかというと、戦後、かなりの数の外国人労働者を移民として受け入れてきたからだ。彼らの子孫である2世、3世が次々に生まれて、ドイツは多民族国家へとシフトしていった。ベルリンに次ぐドイツ第二の都市であるハンブルグは特に外国人率が高いと言われている。

こうした街に生まれ育ったアキン監督には当然のことながら、トルコ系以外の友人たちも多い。今回、脚本も担当した主演男優のアダム・ボウスドウコス(ギリシア系)もアキン監督の幼馴染。二人でわいわいやりながら、楽しそうにロケハンをしている様子が目に浮かんでくる。シーンの背景となるハンブルグの表情が一つひとつとても丁寧に描かれているのは、この街に対する愛情が半端じゃないからだ。そうした意味で、この映画は、路地裏の隅々までを熟知していないと撮れない究極の「ジモッチー・シネマ」だとも言えるだろう。

『愛より強く』でベルリン国際映画祭グランプリ、『そして、私たちは愛に帰る』でカンヌ国際映画祭脚本賞、そして『ソウル・キッチン』で2008年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞・ヤングシネマ賞をダブル受賞し、36歳で世界の三大映画祭を制覇したアキン監督。若くして巨匠になったからと言って、絶対にビバリーヒルズになんて住まないでね。(ロニ蔵)

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