こんなEU、あんなEU~日常に見るヨーロッパ | Life in the EU

忘れがたき三つの光景 Three Unforgettable Artistic Scenes

Posted on: 2011/07/06

原発事故の出口が見えず、その上に梅雨という、なんとも重苦しい日々を過ごしている中で、三つの光景に出合った。実際に目にした光景ではなく、いずれも展覧会で遭遇したものだが、少しだけ勇気を与えてくれたのは確か。7月のある日曜日、都内で出会った三つの光景を僕はこれからも決して忘れることはないだろう。

最初の光景は、月夜の光景だ。会場に足を踏み入れると、蓮の華が咲き誇っている池の畔に佇むことになる。山の端から月が顔を出すと、月明かりによって蓮の葉の緑が浮き上がり、蓮の華が妖しく微笑みだす。目を凝らすと、蓮の葉の上には数羽の蝶が止まっていて静かに羽を動かしている。池の中ほどには、一羽の鷺が羽を休めている。蝶も鷺もメカニカルな動きで、なんだか作り物めいていて摩訶不思議な世界を現出させている。
背面に映し出された月が夜空を静かに移動し、また山陰に隠れてしまうまでの十数分の動きの中、蒼白な月明りによって照らしだされた蓮池はまるで極楽浄土のようだ。これは、新宿パークタワーのギャラリーで行われた『「池中蓮華」展』で出会った、夜の光景だ。日本を代表するデザイナーの栄久庵憲司さんの考える「デザインのユートピア像」を具現化したものだという。

二番目の光景は、朝まだきの光によって映し出された森の表情だ。写真作家の大橋弘さんが、自宅近くの雑木林を毎朝散歩して出会った風景を綴ったもの。7年間歩いて撮りためたもので、国立市の郊外にこれだけ豊かな森の時間が流れていたとに驚かされた。四季折々の木々の描写だけでなく、そこに暮らす昆虫やきのこ、苔など、周囲300mぐらいの都会の森の中に息づく自然の営みが実に細やかな眼差しによって捉えられている。一枚一枚の写真を見ているだけで、瑞々しい朝の光のシャワーを浴びているような爽快な気分になってくる。神楽坂のアートガレーで開催された写真展「森の時間」では、どこまでも澄んだ早朝の光と出会うことができた。

三番目は、パナソニック電工汐留ミュージアムの「ルオーと風景」展で出会った、たそがれ時の光景。フランスの画家ジョルジュ・ルオー(1871-1958)の日本初の風景画展で、ここではルオーが出会った様々な光景が展示されていたが、僕が最も惹かれたのは、晩年に描かれた〈たそがれ、あるいは イル・ド・フランス〉(1937年作)だ。夕食の前にルオーはよく散歩をして、日が暮れていく時間の表情を楽しんだというが、この絵では夕暮れから夜へと向かう時間の裂け目が実に巧みに捉えられている。これだけ見事な夕景はあまり記憶にないほど、深い印象を与える作品だった。
この絵を前にして初めて、月光と早暁の光、そして黄昏時のはかなくも淡い光が僕の頭の中で融合し、ぐるぐると循環し始めた。なんとも不思議な日曜日だった…。(ロニ蔵)

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