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アニュアル・レポートからヨーロッパ的「企業価値」が見える? How Corporate Value is Presented in Annual Reports — A European Perspective?

Posted on: 2011/11/16

私は最近まで、上場企業の投資家向け広報(インベスター・リレーションズを略してIRと称す)に関連した仕事をしていた。その経験から知ったのは、投資家はグローバルに存在するが、企業が発信する情報にはお国柄ないし地域柄が表れるということである。

IR情報のなかに、アニュアル・レポート(年次報告書)というものがある。事業戦略の説明や写真など、企業が自社のアピールのためにつくる企画ページと、法令や上場取引所のルールで開示が決められた、財務諸表や注記をはじめとする財務情報が一緒になった資料である。このアニュアル・レポート、読み比べると、アメリカとヨーロッパの企業で傾向が異なるのである。

アメリカでは、2002年に会計・監査・情報公開などの制度が改革されSOX法が成立して以降、徐々にアニュアル・レポートの企画ページが減ってきた印象がある。IBMを例にとれば、2002年版アニュアル・レポート中40ページを占めた企画ページは、2010年版では16ページになっている。これは、SOX法によって開示が義務づけられた項目が増えた影響だろう。財務部分の開示情報が増え、それにともなってレポートづくりの労力と費用が増加したぶん、企画ページが減ったというわけである。全体として、アメリカの企業のアニュアル・レポートは、無味乾燥で読み物としての魅力が乏しいものが増えた気がする。

対してヨーロッパでは、年ごとに企画ページが膨張して、とうとう自立するくらいに分厚くなったアニュアル・レポートも多い。例えば、内容もプレゼンテーションも洗練されていて、筆者が毎年チェックしていたイギリスのランド・セキュリティー社の2011年版アニュアル・レポートは企画部分が88ページ。スウェーデンのエレクトロラックス社の2010年版レポートは2分冊のうちの第1部全94ページが企画モノ。ドイツのバイエル社の2010年版レポートでは企画部分がなんと139ページにものぼる。

実は、ヨーロッパにおいても2005年の国際財務報告基準(IFRS)の導入以降、財務情報は増加している。にもかかわらず、製品やサービスを魅力的に見せる美しい写真を多数掲載し、成長戦略を図表も交えて説明するなど、多くの企業がそれまで以上に企画ページに力を入れているのだ。ここには、ヨーロッパにおける「企業価値」に対する考えかたや、「企業価値」のプレゼンテーションを重視する姿勢が表れていると思う。

とはいえ、情報が詰め込まれた大冊アニュアル・レポートは、必ずしも読み手である投資家に好評とばかりとはいえないのが実情だ。ページ数が多すぎて、投資家にとって本当に肝心な情報が埋没してしまうという声もしばしば聞かれる。イギリスの金融機関HSBCが発行した2006年版アニュアル・レポートは、1冊で454ページ、1.47㎏にもなったことが英紙フィナンシャル・タイムズで揶揄されたほど。ただし、アップル社のアニュアル・レポートに代表される、財務情報に表紙をつけただけという究極的なアメリカ型も、つまらないと不評である。

ここ数年は、ヨーロッパ・アメリカともに(そして日本でも)、印刷物としてのレポートの配布は止め、オンライン・レポートのみとする企業も増えてきた。企業価値の説明がいかになされるべきなのか、さまざまな立場から知見を持ち寄り、意見を交換するセミナーやウェブサイトも活発だ。正解のない課題だけに、今後も模索が続くことは間違いない。
(オオカミ女)

 

【リンク】
●IFRS財団 ウェブサイト
http://www.ifrs.org/Home.htm

●プライスウォーターハウスクーパースの「コーポレート・レポーティング」サイト
http://www.pwc.com/corporatereporting

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2 Responses to "アニュアル・レポートからヨーロッパ的「企業価値」が見える? How Corporate Value is Presented in Annual Reports — A European Perspective?"

興味深い報告ありがとうございます。米国企業の財務情報公開の極端さ。一方で、欧州企業の量的な極端さ。双方の地域で、財務情報に関する透明性を求められているようですね。米国企業のアップル社や英国企業のHSBCのケースは極端なケースですね。
私見ですが、投資家の注意を惹きたいと真剣に取り組んでいる中小企業もある、あるいは実際にあったが関心を引けず見落とされていたのではないかと思います。根本的に見て、大企業は活動範囲が広くなるので、大量の財務情報を簡潔にすることが必要でしょう。また、その他の情報も魅力的に仕上げなければ、言われた事しかやらないといったいわゆる「お役所体制」に近づいて行く可能性があります。それに対し、中小企業は、投資家の関心を惹く為に、将来的に前途あるプランを提供するべきではないかと思います。
したがって、企業の現在の大きさに最も効率的に対応出来ている企業がこれからも更なる成長の可能性を持っていると思います。

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