こんなEU、あんなEU~日常に見るヨーロッパ | Life in the EU

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元フィンランド大統領のマルッティ・アハティサーリ(1937-)さんの講演会(笹川平和財団主催「和平調停とは何か―アハティサーリ氏の経験から学ぶ」)を聴いた。ナミビアやコソボ、インドネシア・アチェなどの紛争地帯における和平合意に国連特使としてどう関わってきたのかの話はなかなか説得力があった。こうした平和構築のプロセスにおいて、今後、政府間レベルでの話し合いに加え、民間レベルでの仲介がさらに重要になるとの指摘にはなるほどと思った。2008年、こうした功績が評価されてノーベル平和賞を受賞したのだが、その後、一日30件の講演依頼が世界中から入ってくるようになったそうだ。

アハティサーリさんのお話を伺っているうちに、なぜか、「自利利他」という仏教用語が浮かんできた。自利利他とは悟りを得るとともに、他人にも仏法の利益を得させること。菩薩の心構えとして有名な言葉だ。
「自利自他」と言えば、自分の利益を得るだけのこと。おそらくアハティサーリさんは、自分の利益のために紛争の仲介を行っているわけではないだろう。それは壇上で話す彼の仕草や態度から伝わってくる。74歳になった今でも、今日は何か愉しいことがありそうだとワクワクしながら目ざめる、とも語っていた。

ああ、なんて素晴らしい人生なんだろう! おそらく自分の利益ばかり考えていたら、そんな気持には絶対になれないはずだ。人のため、世の中のために行うことが、自分のためにもなっているのだろう。これこそ、自利利他だ。教育学を専攻したというだけのことある。現在はロシア領だが、かつてはスウェーデン領やフィンランド領で陣取り合戦の舞台となったヴィボルグで生まれた元大統領は、一時期、難民になって暮らしたこともあるという。そうした経験が「自利利他」の精神を育んだに違いない。
彼のような菩薩が混迷を深める21世紀の国際社会には求められている。(ロニ蔵)

年末のフィンランド旅行に向けて、気分を盛り上げるために、最近では毎日ジャン・シベリウス(1865-1957)の作品を聴いている。フィンランドの生んだ偉大な作曲家シベリウスの作品としては、『交響詩フィンランディア』や『交響曲第2番』、『交響曲第5番』などが有名だが、最近はまっているのが、グレン・グールド(1932-1982)の『ソナチネ第1番〜第3番 キュッリッキ』。

特にソナチネ第一番がいい。グールドの弾くバッハやモーツァルトも勿論いいのだけれど、このソナチネには、グールドの持つ別の側面の魅力が感じられるような気がする。消え入る音の余韻のようなものによって、逆に音を浮き上がらせるというか。じっと耳を傾けていると、淡いかすかな光が夜明け前の空にじわじわと染み込んでいくのを眺めているような気分になってくる。

従来グールドが見せる強いアタックによって度肝を抜くような破壊性は感じられないが、何かを紡ぎ出しながらも、コアの部分をじわじわと浸食していくとでも言ったらいいのだろうか。そのもどかしさが何とも言えずいいのだ(一度実際に聴いていただかないと、この感じがうまく伝わらないと思うけれど…)。

シベリウスは死に際して、フィンランドの森と湖に想いを馳せて、「自然はかくも美しい。その自然と別れるのが辛い」と呟いてあの世に旅立ったという。そんな彼の言葉を思い浮かべながら、繰り返しソナチネ第一番を聴いていると、フィンランドの幻想的なイメージが静かに立ち現れては、また消えていく。(ロニ蔵)

年末にフィンランドのヘルシンキに暮らし始めた友人夫婦の所を訪ねていこうと思って、いろいろと準備を始めている。久しぶりの海外旅行だが、旅というのは準備しながら想像を膨らませている時がもしかしたら一番愉しい時なのかもしれない。

そんなことを思いながら、フィンランドについて書かれた本を何冊か渉猟していたら、面白い旅行記に出会った。『北への扉 ヘルシンキ』(文:小原誠之、写真:伊奈英次、発行:プチグラパブリッシング)だ。窓際に二つのベッドが置かれたシンプルなカバー写真に惹かれて、中をパラパラ繰ってみると、写真がふんだんに使ってあって、そのインターバルにテキストが挟み込まれている。デザインもクールなので、2800円とやや高価だったが、思わず買ってしまった。

フィンランド航空の日本語版機内誌『Kiitos』に載った記事を再構成してまとめたものらしい。ヘルシンキを拠点に、フィンランドの国内各地を巡り、エストニア、ラトヴィア、ノルウェーにも足を伸ばした旅の様子がさりげない文章と、完成度の高いスナップショットで構成されている。この本を読み終わって思ったのは、ああ、早く森と湖の国フィンランドの光に触れてみたいなあということ。写真を見る限り、高原の涼風が常にまったりと流れているのだ。

この本で紹介されているフィンランドの表情はあくまで写真家が感じたものを見事に映像化したものだから、実際に現地を訪れてみると全然違うかもしれない。しかし旅のイメージトレーニングとして、これほど最適な本もないだろう。あと数ヶ月、パラパラと写真を眺めながら、想像力の旅を愉しみたいと思う。(ロニ蔵)

『北への扉 ヘルシンキ』出版紹介サイト


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