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ひと月前に、長引くベルギーの組閣交渉について「組閣交渉の関係者がオランダ語・フランス語の言語対立問題に正面から取り組んでしまったことが『パンドラの箱』となってしまうか」という文を書いた(当該過去記事)。筆者はこれで組閣交渉がさらに長期化すると100パーセント予想していた。

ところが、なんとそれからまもなく組閣交渉の取りまとめ役のディ・ルポ(Elio Di Rupo)フランス語系社会党党首のイニシアティブの下、ブリュッセル・ハレ・フィルフォールデ(BHV)選挙区分割問題当該過去記事参照)が決着してしまった。
言語対立問題の代表格であるBHV選挙区分割問題は何十年来の「解決できない問題」であり、筆者がベルギーに住んでいた間も難攻不落ぶりを誇っていただけに、今回の決着のニュースを知ったときは、「え!解決したの?」と驚愕が何よりも先に来た。

今回BHV選挙区分割問題が決着したのは、同選挙区の分割を拒絶し続けてきたフランス語系政党側に対してオランダ語系政党が分割の「見返り」を提示し、それが仏語側に受け入れられたからである。組閣交渉での討議内容が一切非公開ということもあり、「見返り」の内容は上記の「決着報道」から半月以上たってから明らかになった。その内容は、フランス語系住民に十分に配慮したブリュッセル首都圏地域の改革などである。

今回の成功の理由は、組閣交渉の取りまとめ役がオランダ語系ではなくフランス語系政党の党首であったことである。過去の組閣交渉ではオランダ語系政党が主導権を握り、少数派のフランス語系政党が頑なな態度をとるのが典型パターンだった。今回、フランス語系社会党党首がイニシアティブをとったことで、フランス語側が主体的に問題に取り組んだのだった。

これに加え、「新フランドル同盟」というフランドル地域(オランダ語圏)最大の利益代表政党が、この夏に組閣交渉の場から去ったことが成功に結びついた。新フランドル同盟は今回(2010年6月)の連邦議会選挙で大勝したが、協議の進め方に抗議して新政権への不参加を表明した。このフランドル主義のハードライナー(強硬路線支持者)の退場により、オランダ語系とフランス語系双方の歩み寄りが実現しやすくなった。

言語対立問題という難題に一区切りをつけたディ・ルポ党首に残された最後の大仕事は、新政権の参加政党を決め、閣僚人事を行うことである。内閣不在期間は500日に届こうとしている。ベルギー有数の金融機関デクシアの解体に直面し、ベルギーの政治経済に強い不安を覚える国民も多いが、このタイミングで国民に強い期待感を抱かせることのできる新内閣が発足され、力強く船出することを願っている。
(じょきんぐまん)

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昨年(2009年)6月に連邦議会選挙が行われたのにベルギーに新しい内閣がいまだに誕生していないという文をこれまで2回(第1弾第2弾)書いたが、そのベルギーの「内閣不在期間」がついに450日を超えた。現在、8つの政党の間で連立交渉が、アルベール二世国王から取りまとめ役に指名されたディ・ルポ氏(フランス語系社会党党首)の下で続けられているが、連立協定の締結の目途はまだ立っていない。

ベルギーの事情に詳しくない人は、いったいなぜこれほどまでに時間がかかっているのか、不思議に思うだろう。実は、今回、「オランダ語vsフランス語」の言語対立の問題が交渉の決着を阻む最大のファクターとなっている。

言語対立問題とは、非常に大雑把に言えば、ベルギー国内がオランダ語を母語とする国民(オランダ語話者)とフランス語を母語とする国民(フランス語話者)に分かれて、互いの権利を主張し合っている状況のことである。ベルギーでは、目に見える形で国土が言語によって二分されている。つまり、北半分がオランダ語圏(フランドル地域)、南半分がフランス語圏(ワロン地域)である。さらに、首都ブリュッセルはオランダ語とフランス語の両言語圏であり、フランドル地域とワロン地域の境界あたりに、厳密にはフランドル地域の最南部に位置する(図①)。

〔図①〕 フランドル地域(北半分)、ワロン地域(南半分)及びブリュッセル(図の青い部分)(cc:nl.wikipedia)

 

もう一つ、言語で二分されているのが、政党である。1960年代から70年代にかけてすべての主要政党がオランダ語系とフランス語系政党に分裂した。連邦議会から市町村議会選挙に至るまで、フランドル地域ではオランダ語系政党の候補者だけが、ワロン地域ではフランス語系政党の候補者だけが出馬し、当選する。ブリュッセル首都圏地域では例外的に両方の言語系の政党が有権者から選ばれている。選挙の日が近づくたびにオランダ語系政党もフランス語系政党もそれぞれ自分たちの言語話者の利益の拡大・保護を声高に叫び、言語対立を再燃させている。

言語対立問題の一つに「ブリュッセル問題」があるが、今回はとりわけハードコアな論点のブリュッセル・ハレ・フィルフォールデ(BHV)選挙区の分割が組閣交渉において議論されている。BHV選挙区とは、ブリュッセル首都圏地域及びこれに隣接するフランドル地域の35の市町村が一つにまとめられた選挙区である(図②)。前述のとおりブリュッセル在住の有権者は、(オランダ語系政党のみのフランドル地域、フランス語系政党のみのワロン地域の有権者とは違い、)オランダ語系かフランス語系の政党のいずれかの候補者に投票することが可能である。しかし、ブリュッセルでは住民の8~9割がフランス語話者であるため、このBHV選挙区の当選者の8割以上はフランス語系政党からの候補である。
つまり、BHV選挙区ではフランドル地域の一部の市町村が、実態としてフランス語圏に近いブリュッセルと一緒にされてしまっており、そこにオランダ語話者の強い不満が存在するのである。

したがって、オランダ語系政党はことあるたびにBHV選挙区の分割、すなわちブリュッセルとフランドル地域の市町村とを切り離すことを要求している。一方のフランス語系政党は、BHV選挙区を分割すれば、フランドル地域の市町村に住むフランス語話者の権利が十分に保証されなくなるのを懸念し、現状維持を強く主張している。

実は、このBHV選挙区分割問題には、オランダ語話者にとりセンシティブな問題が含まれている。ベルギーでは、建国の祖がフランス語話者の都市ブルジョワジーであったことからフランス語だけを公用語とする時期が長く続いた。オランダ語話者は苦労の末、オランダ語をベルギーのもう一つの公用語と認めさせ、さらにオランダ語だけが公的に使用されるフランドル地域を打ち立てた。こうした経緯があるため、オランダ語話者にはフランドル地域にフランス語が流入することを忌み嫌う傾向が強い。

〔図②〕 ブリュッセル・ハレ・フィルフォールデ(BHV)選挙区。欧州議会選挙とベルギー連邦議会選挙に適用される。(cc:Gladiool)

ブリュッセルではここ数十年来、一部の地区の治安が悪化してきている。これを嫌ったブリュッセル在住のフランス語話者たちが、ブリュッセル近郊のフランドル地域の市町村にどんどん移住している。今ではブリュッセルに隣接するこれらの市町村の中にはフランス語話者が住民全体の半分以上を占める市町村が少なくない。このうちの6つの市町村ではフランス語による行政サービスが実施されている。こうしたフランドル地域の市町村にフランス語話者が次々と移住する現象を、オランダ語話者は「フランス語化」と呼び、強く反発している。オランダ語話者の中には、BHV選挙区も「フランス語化」を助長していると考えている者が少なくない。オランダ語系の政党がBHV選挙区の分割を主張することには、オランダ語話者の「フランス語化」に対する反発が背景にある。

同問題を含む言語対立問題は根の深い難題であり、これまで歴代内閣は先送りし続けてきた。前回の組閣交渉(2007年)の取りまとめ役だったレテルメ首相は、(前政権が「封印」してきた)言語対立の問題に取り組んだところ、組閣交渉を200日以上長引かせ、頓挫させた。その後、言語対立の問題を一旦先送りすることでようやく組閣交渉が再開されたのであった。

今回、オランダ語系の一有力政党がBHV選挙区分割を組閣交渉において優先的に議論することを要求(注:2012年の地方選挙を意識したものとみられている)し、残りの7党がこれを飲んだことから、言語対立問題の一つであるBHV選挙区分割問題が正面から議論されている。はたして同問題が再び「パンドラの箱」となってしまうのか、ディ・ルポ氏の采配を初め、今後の推移から目が離せない。(じょぎんぐまん)

【リンク】
ベルギー連邦ポータルサイト(英語版)
http://www.belgium.be/en/

    前回に引き続き、犬について考える。

   我が家のシュウと同じ、チベット原産の犬でチベタン・マスティフという犬がいる。かつてアレキサンダー大王の大遠征に同行した犬といわれ、現在のマスティフ犬種のルーツといわれている。昔チベットでは、王宮内の守りはラサ・アプソ、王宮外の守りはチベタン・マスティフが担っていたそうだ。

   さて、犬という動物、言葉の世界ではその意味が文化や環境によって変化するようで、常にトモダチ、イイ奴というわけにはいかないようだ。犬が人類にとって、あまりに身近な存在だからだろうか。

 以下に英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語でできるだけ重複しないように、犬に関する語、ことわざなどを数例挙げてみる。

      <英語>
Every dog has his day.(だれでも栄えるときがある)
Give a dog a bad an ill name and hang him.(悪評をとったら最後)
Let sleeping dogs lie.(眠っている犬は寝かしておけ:やぶをつついて蛇をだすな)

 <フランス語>
Qui me amat, amet et canem meum.(私を愛する人は私の犬も愛する:あばたもえくぼ)
Qui veut noyer son chien l’accuse de la rage.(犬を溺死させたい者はその犬を狂犬病だという:理屈と膏薬はどこへでもつく)
les chiens écrasés(車にひかれた犬:新聞の三面記事)

 <ドイツ語>
Auf den Hund kommen.(犬に乗る:落ちぶれてしまったさま)
Den letzten beißen die Hunde.(最後の人は犬に噛まれる:他の人より遅く行動する人は罰を受ける)
Hundemuede(猟犬のように走り回って、クタクタに疲れ果てる)

 <スペイン語>
Al perro flaco no le faltan pulgas.(やせ犬にはノミがたかっている:泣きっ面に蜂)
Atar los perros con longaniza.(ソーセージで犬をつなぐ:他人の羽振りの良い様子を皮肉っぽく表現したもの)
El perro con rabia, a su dueno muerd.(怒り狂っている犬は、主人さえも噛む:激怒している者は正常でない、大変危険なようす)

 <イタリア語>
Essere come cani e gatti.(犬猫の仲:犬猿の仲)
Can che abbaia non morde.(吠える犬はかまない)
Fortunato come un cane in chiesa.(運が悪いことを嘆く)

 

 これらは、ほんの一部でしかないが、人間と犬の長い交流の歴史を感じ取れる気がする。
                                                                                    (ばんどうたろう)

 

・社団法人ジャパンケンネルクラブのラサ・アプソに関するページ
http://www.jkc.or.jp/modules/worlddogs/entry.php?entryID=159&categoryID=9

・社団法人ジャパンケンネルクラブのチベタン・マスティフに関するページ
http://www.jkc.or.jp/modules/worlddogs/entry.php?entryID=49&categoryID=2


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