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香港のオフィス街セントラルから山手の方にちょっと上ったところに、蘭桂坊(ランカイフォン)というバー街がある。夕暮れから、大勢の西洋人が立ちながら、酒瓶を片手におしゃべりをしているが、なぜか手に持つ酒は小瓶の黒ビールが多かった。

銘柄は定かではないが、英国の植民地であったことから推測すれば、多分、同国でも広く飲まれているギネスビールではなかったか。背の高い西洋人が豪快にラッパ飲みする姿は、中国離れして洋風のこのストリートの風情に妙にマッチしていた。
ギネスビールは、実は英国の隣国アイルランド生まれだ。アーサー・ギネス氏なる人物が1759年、小さな土地を借りてビール工場をつくったのが最初。つまり、今年、ギネス誕生からちょうど250年目を迎えた。産業革命萌芽の時代から続く長い歴史のある飲料なのだ。

黒ビールは、発芽した緑麦芽を乾燥室に入れ、加熱空気を送って120度くらいまで温度を上げて焦がし、そのあと醸造する。味は穏やかで甘みがあり、麦芽の香りが強い。苦味がない割には、アルコール度数が高いのが特徴だ。

誕生の地である首都ダブリンでは、創業者の土地賃貸契約書などが展示された「ギネス・ストアハウス」が観光の目玉になっており、訪問者用のビアホールがある。そのほか、市内の至る所にギネスビールを飲ませるパブやバーがあり、市民が昼から喉を潤している光景が見られる。ドイツと同じようにビールがよくなじんだ街である。

黒ビールに馴れていない日本人であっても、冷えたギネスビールのあとに、スコットランドの上質ウイスキーを飲めば、まさに「ギネス級」の酔いが回り、浮世の憂さを忘れさせてくれることは間違いない。(日暮らし)

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