こんなEU、あんなEU~日常に見るヨーロッパ | Life in the EU

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練馬区立美術館で、「磯江毅―グスタボ・イソエ」展を観てきた。
写実絵画の作家だと聞いていたのでそれほど期待はしていなかったが、実際に作品を観て大きく予想を裏切られた。写真のように描くのなら写真表現で十分ではないか…、などと思っていたが、磯江の写実絵画には写真では捉えることができない不思議なリアリズムが内包されていた。磯江のことを魔術的リアリズムの作家と呼ぶ人がいるが、その意味がよく分かった。現実と幻想が混じりあいながら、虚実の皮膜にあるリアリティが見事に描写されている。

例えば、白い皿に載ったイワシ。食べ終わった後なのだろうか、尾ひれがもぎ取られ、胴部も骨がむき出しになっている。口を開けて、虚空を見つめるイワシの目が何かを訴えかけるようでもある。白い皿についたシミや汚れのくすんだ感じがとてもリアルだ。ディテールが緻密に描かれた油彩画だが、これを絵画とも、写真とも呼んではいけないような気がする。

磯江毅は、19歳で西洋美術を学ぶためスペインに渡り、30年にわたる画業のほとんどをスペインで過ごした。24歳で開いた個展を機に、スペイン人が発音しやすいグスタボと改名。以降、スペインリアリズム絵画の作家として数多くの権威ある賞を受賞した。スペインの画家たちは磯江の作品に東洋的な簡潔さを感じたというが、確かにそこには、スペインの鮮烈な光というよりも、月夜の光に映し出されたような静謐さが漂っている。

2007年、磯江は53歳の若さで世を去った。彼の妻によると、「ますますものが見えてきた」と磯江が語った直後だったという。そんな彼の絵をもっと見たかった。なんとも残念なことである。
(ロニ蔵)

     磯江毅 ≪鰯≫   2007年                 板、ジェッソ・鉛筆・水彩   41.0×53.0cm

  • In: Book | Culture
  • Comments Off on 『風の影』 La Sombra del Viento (Shadow of the Wind)

今さらながらではありますが、4~5年前に購入してずっと放置していた『風の影』(カルロス・ルイス・サフォン著)を最近、読みました。読み始めたら止まらなかった!

舞台は1945年のバルセロナ。スペイン内戦の深い傷がいまだ、街や人々の生活に影響を及ぼしています。10歳の少年ダニエルが古本屋を営む父親に連れられ、「忘れられた本の墓場」を訪れます。そこで、フリアン・カラックスの『風の影』という小説に出会います。これはレア本で、世界でこの1冊しか残ってないものでした。ダニエルはフリアンの作品をもっと読みたくなりますが、フリアンは消息不明の謎の作家であることがわかります。

ダニエルはフリアンに惹かれ、必死になって彼を探しますが、その過程でスペイン内戦時代を生き抜いてきた暗黒の人物から狙われたり、恋に落ちたり、恋に破れたりと少年から青年へと成長していく様も描かれています。そして、スペイン内戦の悲劇が、ダニエルによるフリアン探しの過程に大きな影を落としていきます。歴史がこの小説を濃密にしている印象を受けました。

17言語、37カ国で翻訳出版された本。ミステリーとロマンと歴史の要素がつまった1冊です。(モコちゃん)

  • In: Art
  • Comments Off on 「シュルレアリスム展」に行ってきました Visiting an Exhibit of Surrealist Paintings

六本木の国立新美術館で開催中の「シュルレアリスム展」へ行ってきました。パリのポンピドゥセンター所蔵の170作品あまりが一挙公開。久しぶりの美術展鑑賞にワクワク。しかし、作品の前に立って眺めてみても、「う~ん」とうなってしまった。よくわからない…。というか、全然わからない。

展示作品の中で、唯一知っている画家は、スペインのサルバドール・ダリだけ。そのダリの絵も、ピアノの鍵盤の上に、金色のオーラにつつまれたレーニンの頭が六つ登場。ピアノのそばに座っている背広姿の男性は、背中に白い布をつけ、さくらんぼが描かれた腕章をつけている。なんだか奇妙。シュルレアリスムって一体、なんだろう~?

そんな私でも理解できる解説がありました! 国立新美術館のホームページに載っている「リサとガスパールのしゅるれありすむ入門」。シュルレアリスムは「超現実主義」のことで、1900年代初頭のパリで、アンドレ・ブルトンという詩人がリーダーになって生まれた、詩と芸術の運動のこと。ヨーロッパだけでなく、アメリカや日本にまでその運動が広がったのには、芸術だけではなく、人の生き方や考え方そのものに革命を目指すという志があったからだそうです。

観る側の想像力をかきたてるシュルレアリスム展。というか、想像力を働かせないと、何が描かれているのかわからなかったシュルレアリスム。5月9日までやっているので、また行ってみよう。(モコちゃん)

国立新美術館(シュルレアリスム展)

 バルセロナにいたときのお話。といっても、1988年、バルセロナオリンピックを4年後に控えていた頃の話だ。オリンピックは街を変える。バルセロナも例外ではない。当時、バルセロナに暮らす人たちは、街が“変わる”という期待と、“変わってしまう”という不安の両方を感じていたように思う。ガウディをこよなく愛する学生と出会い、ガウディの建築物を案内してもらったが、彼も期待と不安を口にしていた。グエル公園を散策した後、街角のバールに立ち寄ったとき、「それでもこの味は変わらない」と彼が注文したのが「パン・コン・トマテ」だった。出てきた皿には、軽くトーストしたカタルーニャ独特の田舎風パンに、ニンニクやトマト、塩、オリーブオイルが添えられていた。彼はトーストにニンニクをすり込み、トマトをすり込み、塩とオリーブオイルをかけた。見様見真似で、彼と同じように調理(?)し、赤く染まったパンを口にしてみる……ニンニクの香りとトマトの甘酸っぱい味わいが口に広がり、驚くほど旨かった! スパークリングワイン・カバにもよく合う。

「旨い」を連発したのがよほどうれしかったのか、彼は「この味はカタルーニャ人の誇りだ」と熱く語り出した。スペインがモザイク国家と呼ばれ、カタルーニャ地方やバスク地方、カスティーリャ地方などが、それぞれ独自の言語や文化を守り続けていること、ワールドカップのスペイン代表も自分の地方の代表が選ばれていなければ応援もしないことなども、恥ずかしながら彼の言葉で初めて知った。スペイン代表チームがワールドカップで優勝できないように、バルセロナオリンピックでもスペインがひとつにまとまるとは思えないと言う。「オリンピックが開催されても、バルセロナの良さを失いたくない」、そう言いながら、彼はニヤリと笑った。「でも大丈夫。パン・コン・トマテの味だって、ずっとこのままさ」

 あれから、20年以上が過ぎた。東京でもスペイン料理、しかも美味しいパン・コン・トマテを味わえる店が増えてきた。昨年のワールドカップでは、スペイン代表がついに初優勝を果たした。

 彼は、今頃、どうしているのだろうか。きっと、サグラダ・ファミリアの建設を見守りながら、パン・コン・トマテを食べているに違いない。(酒バラ)

在バルセロナ日本国総領事館がカタルーニャ料理を紹介しているHP
http://www.barcelona.es.emb-japan.go.jp/japones/kankou_tabemono.htm

12月7日、9日と2日に分けて開催された「ナビダデス会」(スペイン食文化協会主催)に先日参加させてもらった。「ナビダデス」はスペイン語の「ナビダ(La Navidad)」からきたもので、クリスマスを意味する。東京も街のいたるところでクリスマスイルミネーションが見られるようになり、このようなクリスマスを祝う行事が各所で行われているだろうが、個人的にスペイン風のクリスマスパーティーというのは初めてで、とても貴重な体験となった。

 会場は、恵比寿にあるスペイン料理店「SPANISH LOUNGE PARADOR」。スペインを代表する料理が次々と並べられ、かわいい筒状の容器に入れられた数種類の冷製スープやイベリコ豚のスライスとバゲット、パテやスペイン風オムレツなどの前菜は、とてもカラフルで目で見ても楽しめ、まさに料理の中にもスペインの情熱が息づいていると感じた。そしてスペインのメインディッシュといえば「パエリア」。厨房でシェフが仕込みをしている姿をずっと見ていたが、鍋から湧き立つ蒸気が食欲をそそり、できあがりを今か今かと待ちわびていた。「パエリア」が運び込まれたときは、会場のテンションも頂点に。じっくりと調理されただけあって、しっかりと海鮮の味がしみ込んでいて、食べごたえもあり、しっかりとお腹が満たされた。

 パーティーでは料理だけでなく、CAVAをはじめとするスペインのワインも参加者にふるまわれた。私はそれほどワインが飲めるほうではないのだが、どのワインもそれぞれに個性があり、大変おいしくいただいた。ワインをこよなく愛する人ならば、次回、是非スペイン食文化協会のイベントに参加されるとよいだろう。その晩ふるまわれたCAVAはミシュラン3つ星を獲得したレストラン、エル・ブジ(elBulli)のハウス・スパークリングワインに選ばれた、ロベルト・ホタ・ムール(ROBERT J. MUR)。とてもフルーティーで飲みやすく、かなりお高いのだろうな・・・と思っていたが、意外と一般庶民にも手が届くお手頃価格とあって、クリスマスにはもってこいのスパークリングワインではないかなと思う(ちなみに銀座三越などで取り扱いがあるそうだ)。スペイン食文化協会は今年8月に発足したばかりだが、スペイン製の食材やワインを日本で広める活動をしており、今回ROBERT J. MURのほかにも、アニマ・ネグラ(Anima Negra: 黒い魂)という、マジョルカ島の固有品種のブドウで作られた赤ワインがふるまわれるなど、すでに多方面で活動を広げられているのだなと感じた。

ちなみに余談だが、スペインのクリスマスは、一般にいう、「イブの日にサンタさんがプレゼントを運んでくる」といった習慣はなく、代わりに、年が明けて1月6日の「東方三賢人の日(Dia de los Reyes Magos)」がプレゼントの日なのだそうです。(さくら)

スペイン食文化協会
http://ameblo.jp/age-j/
SPANISH LOUNGE PARADOR
http://r.gnavi.co.jp/a242110/
elBulli
http://www.elbulli.com/
Anima Negra
http://www.annegra.com/

11月27日(土)に、東京・市ヶ谷にあるセルバンテス文化センターで、「スペイン:地中海の鏡」というタイトルのシンポジウムが開催されました。

このシンポジウムは、スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会の15周年記念シンポジウムで、樺山紘一東京大学名誉教授の基調講演のほか、研究者による報告が行われました。シンポジウムの構想テーマは、「スペイン美術の魅惑はその歴史的、地理的、民族的な環境のゆえに地中海を映し出す“鏡”に喩えられるのではないか」というものでした。

樺山氏は講演で、「スペインは地理的にヨーロッパとアフリカの間に位置し、その文化にイスラムの影響を色濃く残している歴史的“トラウマ”といわれしものを中心に展開されてきた」と指摘されていました。そして多数の文化的集積がスペイン文化の個性を生み出してきたスペインの歴史的努力は、21世紀の文化および民族の多様性を考えたとき、その先駆者になぞらえることができるのではないかという未来志向な見解を述べておられました。

それから、4名の研究者による報告がありました。神奈川大学の鳥居徳敏教授からは、イスラム世界から見てもアルハンブラ宮殿は至宝の建築とされるという結論が、東北芸術工科大学の安發和彰准教授からは、万物の母とされるイシス信仰に源流をさぐる聖山モンセラの黒い聖母研究の紹介が、大阪大学の岡田裕成准教授からは、メキシコのイスミキルパン修道院聖堂身廊壁画にアステカの古代文明が描かれていることに注目し、大航海時代の交通と文化やアイデンティティにつながるエキゾチックとグロテスク芸術についての珍しい研究報告が、東京造形大学の岡村多佳夫教授からは、ピカソ、ミロ、ダリの人生と作品についての報告がありました。

スペインの歴史や、大航海時代における南米との関係まで話は巡り、歴史を遡りながら現代と未来が交錯する世界を見つめるヒントが提供されたような場だったと思います。(くるみ)

http://tokio.cervantes.es/jp/default.shtm

2010FIFAワールドカップの開催に合わせて、英国エンパイア誌が「史上最高のワールドシネマ100本(100 Best Films of World Cinema)」を発表した。第一位は黒澤明監督の「七人の侍」。そのほか、日本映画では「千と千尋の神隠し」、「東京物語」、「ゴジラ」、「となりのトトロ」、「AKIRA」など12本が選出されていたが、その中にスペインが誇る巨匠ビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」が選ばれていて懐かしく思った。

 なぜ、懐かしいのかと言えば、ビクトル・エリセは寡作な作家として知られ、今まで3本の長編映画しか撮影していないからだ。最後の長編は1992年に制作した「マルメルの陽光」。その後、「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」というオムニバス映画の中で、短編を制作しているが、それも2002年のこと。およそ10年に1本しか撮っていないのだ。

 私が最初に観たのは、「エル・スール」という1982年に制作された作品。当時、渋谷でスペイン映画祭が開催され、その中の1本として上映されていた(当時は「エル・スール〜南へ」という邦題がつけられていた)。

 映画はエスレリャというひとりの少女の成長を綴っていくが、彼女の内面の変化があぶり出すのが父親・アグスティンの深い孤独だ。アグスティンはスペイン内戦の傷跡をまだ抱え込んでおり、あこがれの地・南への想いを断ち切れないでいた。映画は寡黙に、そして美しく、父と娘の日々を映し出していく。

 映画の冒頭、ひとつの部屋が朝日で明るくなり、エストレリャが父親の死を予感するシーンのなんと美しいこと。映画のすべてのシーンが、まるで絵画のような奥深い美で構成されている。日常の中の細部にこそ「物語」は存在する、そのことを思い知らされた映画だった。大学時代の恩師が「だからこそ、制作するのに10年という歳月が必要だったんでしょうね」と語っていたのを思い出す。

 北野武監督の作品が話題となった今年のカンヌ映画祭で、ビクトル・エリセははじめて審査員をつとめ、インタビューの中で、現在制作中の作品について次のように答えている。

「1年前から小作品を絵を描くように撮っています。これがとても楽しいんです。『Mémoire et Rêve』と名づけたドキュメンタリーシリーズです。3章撮りましたが、10章撮れたら上映したいですね。世界中を旅しながら撮っている作品なんです。このカンヌでも何か撮るつもりです」

 彼の新作に出会えるのはいつになるのだろうか。

100 Best Films of World Cinemaの公式サイト
http://www.empireonline.com/features/100-greatest-world-cinema-films/default.asp?film=1


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