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85歳でもバリバリです Eighty-five and Still Going Strong

Posted on: 2010/06/21

ふらんすと平仮名の誌名が洒落ている。フランスでも、仏蘭西でもない。やはりこの雑誌には、なぜか平仮名がよく似合う。

白水社の発行する『ふらんす』は、今年で創刊85年を迎える超老舗雑誌。1925年に『ラ・スムーズ』(種まく人の意味)としてスタートし、1928年より現在の誌名になった。現在の『ふらんす』の誌面は、「フランス語学習(初級〜上級)」と「フランス語圏文化紹介」の二本柱によって構成されている。A5判で全86ページ(*4月号のみ全124ページCD付)。日本で唯一の月刊フランス語学習誌だ。

編集長の丸山有美さん。

2005年に創刊80周年を記念して、『ふらんす 80年の回想』(白水社)が発行されたが、この本を読むと、『ふらんす』の執筆陣の充実ぶりに驚かされる。与謝野晶子に始まり、堀口大學、河盛好蔵、遠藤周作、渋澤龍彦、吉田秀和、生田耕作、津島祐子、辻邦生、鹿島茂、堀江敏幸など、ちょっと名前を挙げただけでも、う~んと唸ってしまう錚々たる顔ぶれだ。中でも、岸田國士が書いた「翻訳について」という文章が面白かった。特にモオパッサンへの言及が秀逸だ。「モオパッサンは、なんでもないやうで、やつてみると、どうにもならない。日本語にすると、味のつけやうがないのである。物にもよるが、下手をすると、俗つぽくなつて讀めないものになりさうだ。あゝいふことを書いてあれだけの文學になるのは、佛蘭西語の力ではないかと思ふ。しかし、それよりもほんたうは佛蘭西の文化の力である。」さすが、岸田國士だ。フランス文化の本質をずばりと言い当てている。

『ラ・スムーズ』の創刊号

編集長の丸山有美(あみ)さんは、「これからも、フランス語圏文化の多様な魅力を伝えていきたい」と言う。「昨年度はBD(バンド・デシネ)を表紙のテーマに据え、毎号選りすぐりの1冊をご紹介しました。BDとは、フランスやベルギーを中心としたヨーロッパのマンガ文化です。小誌の読者は、10代〜90代で男女比は半々。そのため、幅広い層に訴えかける文学性の高い作品を選んだのですが、当初は『若い層に媚びる表紙はやめてほしい』という声もありました。そこで、特集を組み、文学と同じように『物語』を味わうBDの楽しみ方を提案したところ、読者の反応が一気に好意的に変わりました。表紙のテーマは年度ごとに変えています。今年度は『パリ歳時記』シリーズ。季節の風物詩を、表紙写真と記事で取り上げています」

雑誌の廃刊が相次ぐ中、こうした良質な雑誌にはなんとしても頑張ってもらいたいものだ。(ロニ蔵)

https://www.hakusuisha.co.jp/france/

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